子の引き渡しを強制するための制裁金を否定した判例

こんにちは,高円寺法律事務所です。

今回は判例のご紹介です。

平成30年(許)第13号 間接強制決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可
抗告事件
平成31年4月26日 第三小法廷決定

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/646/088646_hanrei.pdf

以下,分かりやすさを重視し,ややざっくりとした記載も含みます。

 

事案としては,

・父親が子を連れて別居
・それに対して母親が,子を返せと裁判所に申し立て(子の引き渡しといいます)
・裁判所は父親に対し,子を母親の元に戻せと命令
・しかし,父親はその命令に従わなかった(※後述するように,厳密にはちょっと違いますが)
・それを受け母親は,子を返すまで父親は一日につき●万円払え,といった制裁金を課してほしいと裁判所に申し立て
・上記の話が最高裁判所で判断された

こんな感じです。

 

そして,裁判所は,

・子が父親から母親へ引き渡されることを拒んでいたとしても,それを理由に,直ちに父親へ制裁金を課さないといったことにはならない
・ただし本件は,父親が母親に対し,子に有害な影響を与えずに引き渡す合理的な方法が想定しがたい
・このような状況で父親に制裁金を課すのは過酷であり,母親の申し立ては権利濫用である

として,母親の制裁金の申立てを却下しました。

 

例外を認めた本件には,次のような事情がありました。

・裁判所の手続きとして,過去に子の引き渡しを行おうとしたところ,子が拒絶して呼吸困難に陥りそうになり,実際に引き渡しができなかったこと

・母親による人身保護請求という法的手続が棄却されたこと

これらの事情が重なり,本件のような判断がなされました。

 

本判決の結論は,全ての事案で妥当するものではありませんが,本判決のような事情を有する場合には,権利濫用を理由に制裁金をブロックできることになるのだと思います。

 

 

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